■ 人間工学
□ 人体寸法
− 1 − 測量値とその応用
人体寸法が、人間工学の基本であるということは言うまでもありません。
しかし、従来から発表されてきた資料は、人類学の立場から行われたものが多かったため、骨を対象にした測定値で、身体の軟部や動部についての数値は比較的少なかったのです。
人間工学の研究が始まってからようやくそうした資料が整い始めましたが、まだ十分ではありません。
人体寸法には静的なものし動的なものがとがあります。
「静的人体寸法」とは人体そのものの寸法をいい、「動的人体寸法」とは、生活行為を中心にして、人間とものとを組み合わせた空間、および人間とものとを組み合わせた空間を対象にした寸法の意味です。
建築の分野における人体寸法は、人体各部の詳細にわたる静的な寸法が必要ですが、同時に、人間の動きとその空間を含む動的な寸法も重要です。
人体寸法の測量値を使うにあたって、注意を要することが2つあります。
その1つは、人体寸法がそのまま設計の寸法にはならないということです。最終的に設計図に示される寸法は、人体寸法になるほどかの「あき」の寸法を加えるか、減らしたものです。
この「あき」の寸法は重要で、設計の対象によっては、あきのほうが、人体寸法そのものよりも大事な意味を持つ場合があります。
普通には、両者の関係は、次のように考えれば分かり易いです。
被服の場合には、あきのもつ重要さは、人体寸法の重要さに比べて小さいです。
一方家具や機器の場合には、あきと人体寸法とほぼ同等の価値を持ちます。
また、建築空間の場合は、あきのほうが人体寸法より重要な価値をもつことがあります。
この重み付けをよく理解しないで、人体寸法だけを頼りにして設計寸法を決めると、使いにくいものになってしまうおそれがあります。これは、特に注意したい点です。
もう1つの注意点は、人体寸法は、民族、職業、年齢、性別などによって違いがあるほか、地域によっても違いがあるという点です。
したがって、ある1つの数値をもって、全体に共通する寸法と考えることは危険です。
しかし私たちは、実際にある数値を一応のよりどころとして、設計ほ進めていかなければならない。
そのため、計測値を利用するにあたっては、慎重な配慮が必要になります。
いま平均値を採用したとすれば、適合するのはその周辺の体位を持った人たちだけで、大きな人も小さな人も不適合になってしまいます。
人体計測値を使用するときは、平均値と標準偏差を考慮して適合する範囲を決めなくてはなりません。
その範囲と大きさは設計する対象によって判断することになります。
− 2 − 人体の大きさと重さ
人体の大きさは普通、身長・座高・体重などによってあらわされます。
身長と人体各部位の計測値との間には、ほぼ比例的な関係があるとみなすことができます。
そのため身長を基準にして、人体の主要部位の寸法を求める換算がよく用いられる。
以上は寸法について述べましたが、人体各部の質量の配分も設計にあたって必要です。
成人の頭部の質量は全体重の8パーセントであること、また、椅子に腰掛けたとき、座面の受ける力は、全体重の約85パーセントとみなしてよいことなどがわかります。
なお身体全体の重心の位置は、中央よりやや上寄りで、へその少し下にあると考えればいいです。
− 3 − 手と足の大きさ
設備や機械は、人体と手や足を通じて結びつくことが多いです。
したがって、ハンドルや握りの大きさは、手の寸法を参考にして決めなければならないし、ペダルや階段の踏み板の寸法も足の大きさから決まってくることになります。
手と足の発育は、身長の発育と密接な相関を持っていて、身長の発育が止まるころには、ほぼ一定の値に達すると見なしてもいいわけです。
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