■ 人間工学
□ インテリアの安全
− 1 − 住まいと安全
家庭の中は安全なところと思われていますが、実はいろいろと危険が潜んでいます。
そのことを、死亡の数で比較したデータによると、交通事故で亡くなる人は1年に12.000人なのに、家庭内の事故で亡くなる人は4.000人もいるといいます。
地震とか火事とかいう非常災害で亡くなる人は1.000人、労働災害が2.000人という数字を見ると、家の中は以外と安全ではないことがわかります。
死亡事故に対して、怪我をする人の数はその何倍かに達するはずです。
死亡するのは力の弱い高齢者と子供で、怪我をするのは若い人だという報告もあります。怪我の内容は、打撲、擦り傷、切り傷、やけど、捻挫というのが一番多いです。
死亡を含めて、事故の発生する場所はどこが多いかというと、一番多いのが浴室で、次が床の滑りにて、3番目が階段となっています。
安全の内容には2つの側面があって、1つは人間の側で考えるべき問題で、もう1つは物の側から考えるべき問題です。これらについて日常災害と非常災害の2つに分けて、人間工学の立場から、次回は考えてみたいと思います。
− 2 − 日常災害
日常災害を分類すると、落下によるもの、接触によるもの、危険物によるものの3つにわけることができます。
(1) 墜落
ベランダや窓、吹き抜け部分、階段の踊り場などから落ちる場合がこれに当たります。
ベランダについては、手すりの高さと強度、手すり子の間隔、手すりの取り付け強さなどが原因になります。
高さは110センチ以上であれば、成人の重心よりも高いので一応安全です。
普通の市販品は、120センチのものが多いです。
次は手すり子の間隔ですが、幼児の頭が入らないためには、11センチ以下であることが必要になります。
また横方向に取り付けると、子供が登って遊んだりするので危険ですから、デザインには十分注意したいですね。
手すりの取り付け強度は、通路は300kg/m、ベランダでは150kg/m以上が要求されています。
また笠木の上面が平らであると物を乗せやすいですが、集合住宅ではそれが落下すると危険を及ぼす恐れがあるので、かまぼこ型にして、乗せにくくしている工夫したものが使われています。
(2) 転落
階段やスロープなどの高い所から転がり落ちる場合がこれに当たります。
階段の勾配は45度以下にすることが必要で、望ましいのは30〜35度ですが、設計上からその条件を満たすのは難しいです。
法規では住宅の場合、蹴り上げ寸法23センチ以下、踏み面15センチ以上と決められています。
階段は一定のリズムで上下できることが理想で、途中で条件が変わるとつまずきやすくなります。
エネルギー消費の理論上からは初めには段差が小さく、次第に大きくなって、終わりには小さくなることが望ましいという考え方があります。
しかし、それが実際になると不便なことは、止まったエレベーターで試してみるとよくわかります。
また上がり終わったところに段差があると、危険ですから特に注意したいですね。
階段の滑り防止の為には、踏み面の端にノンスリップを付けたり、仕上げ材に滑りにくいものを選ぶのがいいです。
転落の防止には手すりを取り付けることが有効となります。
手すりの高さは80〜85センチ程度がよく、壁から4〜5センチ離して取り付けると使い易いです。
ただし、法規では、住宅の階段の幅は75センチ以上と決められているので、手すりを取り付ける為には、設計にあたって、あらかじめ寸法の余裕を見込んでおく必要があります。
階段の種類にはいろいろなものがあります。
それらはタイプによっても、安全の度合いが違います。特に途中で方向を変える踊り場の寸法には十分な余裕を見込みたいものです。
スロープは、勾配が強いと滑りやすくなるので注意がいります。法規では、1/8以下にするように定められています。
(3) 転倒
同一平面上で身体のバランスを失って倒れることが転倒で、滑りやすい床や、床に段差があってつまづいた場合などがこれにあたる。
床が滑りやすいと歩幅が小さくなり、足の動かし方も変わってくるので、危険であるのみならず、疲れやすくなります。
滑りやすさは、足の裏と床との間の摩擦係数の大小で決まってきます。
歩行動作を分析すると、まず床にかかとがつき、次ぎに足先に重心が移り、親指の先で床をけって身体を前身させるという動作の繰り返しです。
滑りが生じるのは、かかとが床に着くとき、水平分力の方が摩擦抵抗よりも大きい場合です。
このときは後方に倒れますから、頭を打つことになり、被害も大きくなります。
滑り防止のためには、床の仕上げ材料の選択に注意することももちろんですが、表面に小さな凸凹をつけるとか、目地を滑り止めにするとかの工夫も必要となってきます。
弾力性のある材料は、滑りの防止にも大変有効です。
老人は歩行の際はすり足になるので、くづすりや、小さな高低差でもつまづくことが多くなります。
これは特に注意したいことです。
床に段差が必要なときは、目立つような仕上げにするとか、足下を照明で照らすとか、又は思い切った大きな段差にするとかの工夫が必要となります。
またカーペットをピース敷きにする場合には、全体が滑って危険な場合があるので、裏に滑り止めの対策を考慮する必要があります。
(4) 落下物
照明器具や高い所に取り付けた装飾物が、振動などによって落下し、危害を与える場合がこれにあたります。
シャンデリアなどを取り付ける場合には、天井の強さをしらべ、必要に応じて補強するなどの対策が望ましいです。
たんすや戸棚などの収納家具が倒れると危険なので、家具の安全性についてJISで試験法が決められています。
(5) 衝突・はさまれ
開けたままのドアにぶつかったり、廊下の曲がり角や動線の交差するところで、他人にぶつかったりするのが衝突で、建具を開閉するときの傷害が挟まれです。
衝突に対しては、動作に必要なスペースのほかに、できるだけ余裕を持たせることが望ましいですが、そのほか、建具の取り付け位置や開く方向、さらにドアにするか、引き戸にするかなどの工夫によって、それらを避けることができます。
はさまれについては、ドアではドアクローザーを用いるだとか、はさまれ防止の加工をするとかの設計上の工夫が望ましいです。
(6) すりむき・切り傷
狭い廊下の壁や荒い仕上げの壁などは、しばしばすりむきの傷を受ける原因にもなります。
狭いところや動きの激しいところでは、壁の仕上げ材料には十分注意を払いたいものです。
切り傷に最も関係するのはガラスですから、ガラスの取り扱いについて付記しておきます。
大きなガラスの開口部のところには、その前に手すりを取り付けるとか、植え物の鉢を置くなどの工夫をするのがいいでしょう。
また目の高さの位置に目立つように印をつけて、ガラスの存在を認識させるのも有効でしょう。
階段の正面や浴室の入り口などでは、転倒に対して安全なように、ガラスの使い方にも注意したいものです。
(7) 火傷・感電
火傷にはカイロや床暖房のように、低温のところに直接肌を長時間あてることによって起こる低温火傷と、熱湯や暖房器具による高温火傷、転倒などによる摩擦火傷などがあります。
これらの防止については、できるだけ設計時に注意するとともに、設備器具の選択を適当なものにしたいものです。また感電の防止についても同様です。
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