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■ 住宅政策と住宅産業
 

□ 住宅ストックの状況と国民の実感


− 1 − ヨーロッパの住まいと日本の住まい



住宅というのは、気候風土と深い関係があって、その土地の長い生活体験と風土が結びついて生まれてた、文化の産物というべきものがあります。

したがって、ヨーロッパやアメリカの住まいと日本の住まいでは、その内容におのずから大きな違いがあるのは当然と言えるでしょうね。

ヨーロッパの国々は、古い地層の上に建っていて、一定のリズムで夏と冬がやってきます。

地震もなければ台風の恐れもありません。その上、北の国だからずいぶんと寒いです。

そこで、ヨーロッパの人々は、厳しい冬に耐え、室内気候を人工的にコントロールできるように、厚い石やレンガの壁で頑丈なシェルターを作りました。

この頑丈な構築物は何百年でももつ財産だから、これを不動産と呼んだのです。


ところが、日本の風土はヨーロッパのそれとは大きく違いますね。

北から南に細長く連なる国土の大半は高温多湿です。その上、日本人の人生観は、ヨーロッパのようなキリスト教ではなく、仏教から生まれた東洋哲学が基本にありました。

そこでこの世を「仮の住みか」とみなし、自然の中に溶け込んで密やかに暮らす、という考えに立って住まいが作られてきました。それはまた、暑い夏を過ごすことに重点が置かれていました。


そこで、木の柱を立て、草の屋根を葺き、柱と柱の間に薄い障子を入れ、建具をはずせば柱だけが残って、家の中を風が通り抜けるという、まさに夏向きの家を作ったのです。

また、雨が多いので軒を深く作り、家の周囲には縁側を回しました。

この開放的な木造建築の家は内と外がゆるやかにつながり、インテリアとエクステリアの区別がはっきりしてはいません。

ヨーロッパでは空気でさえも遮断するほどの重いドアがあって、インテリアとエクステリアは画然と区別されていますが、日本ではそれとは全く違う開放的な家が作られてきました。

これは、日本が決して貧しかったわけではなく、そのほうが住み易かったために、こうした形の住まいが生まれたのです。


ところが日本は、明治の始めに大きなカルチャーショックを受けたので、ヨーロッパの住宅の方が遥に優れていると思い込みました。

過去100年の間、ヨーロッパの家を手本にして、日本の家のレベルを上げることに大きな努力を払ってきました。

その努力が報いられて日本の住宅の質は著しく向上しました。特に、住宅産業がおこって以来の進歩には目を見張るものがあります。


しかし、、近年そうしたヨーロッパ風の閉鎖的な家が、日本の風土にはたして適しているかどうかについては、反省する動きも一部に出てきています。


これは、現在の私達に課せられた大きな課題ですね。



・ さて、日本の住宅と欧米の住宅を統計によって比べてみます。


わが国の住宅建設戸数は景気の動向によって大きく左右されます。

平成3年(1991)は134万戸程度に留まっていますが、平成元年(1989)について言えば167万戸余りが建設され、同年のアメリカの142万戸を大きく上回り、戸数で見る限りでは世界最大の住宅市場を持つに至りました。


住宅建設の活動の状況を国際比較する指標の一つとして、人口1.000人当りの住宅建設戸数がありますが、これで見ても日本は13.5戸とアメリカの5.7戸、フランスの7.4戸を大幅に上回り、いかに活発であるかということがうかがえます。

尚、ここで注目したいことがあります。アメリカの人口は日本の約2倍ですが、それにも関わらず新築住宅戸数が少ないということは、住宅の寿命が遥に日本より長いということを意味します。

その建替えサイクルを需要のバランスで概算すると、日本は30年で1回強となります。

米国では50年で、ヨーロッパでは60年以上、あるいは100年に達する国もあるといいます。


耐用年数の長い家を作ってストックの体質を変え、サイクルを長引かせれば国民の経済負担は軽減します。これは、今後に課せられた、重大な課題です。


次に住宅の広さについて考えてみましょう。

新築住宅の1戸当りの床面積は、日本は80.9平方メートルですが、アメリカは162平方メートルです。

現在存在しているすべての住宅ストックについての統計によれば、日本の住宅1戸あたりの室数は4.9室で、アメリカの5.3室よりも少なく、旧西ドイツの4.4室、フランスの3.9室よりも多く、イギリスの4.9室と同レベルになっています。

又、1室あたりの居住人数で比べると、アメリカ、イギリス、旧西ドイツよりもやや多く、フランスと同程度となっています。

しかし、早川和男氏の著書「日本の住宅革命」によれば、日本の住宅はまだ「欧米並み」にはとうていなっていないと言います。

その趣旨は以下の通りです。


1室の定義 : 欧米諸国の住宅には「居間」があります。個室の他に、家族団らんの場として、又、一人暮らしでも寝室以外に接客空間があります。

その広さは、スウェーデンでは20平方メートル以上、旧西ドイツで18平方メートル以上、イギリスでは15平方メートル以上です。

主寝室はいずれも12平方メートル以上なければ寝室と認められません。日本では3畳でも一室に数えるので、数字の上だけでは比較は出来ません。

又、面積の測り方にも違いがあります。欧米では内法で測りますから、実際に使える面が数字になっています。

物置、バルコニー、パイプスペースなども面積に入れないので、そうしたことも考慮に入ないと実際の比較はできないと言っています。



− 2 − 住まいに対する国民の実感



住まいに対して国民が感じている実感を、建設省が行った住宅需要実態調査(昭和63年)によって探ってみると、 

→ 現在の住まいに何らかの不満があるのは全世帯数の51.5%。

住環境について不満を持っている世帯 → 33.2%。


ところで、住宅のどにに不満を持っているかという質問に対しては、「収納スペースの不足」「遮音性や断熱性の不備」「傷み易い」「間取りがよくない」「暖房や給排水の設備が不十分」などが指摘されています。

また、住環境の不備として、「集会場、図書館などの接近性」「子供の遊び場、公園などの量、接近性」「火災、地震、水害などに対する安全性」などが指摘されています。


この調査では、今後の住宅の改善計画についても訪ねていますが、「具体的計画がある」のは全世帯の4.6%、「考えている」世帯は26.8%で、合わせて31.4%の世帯、すなわちおおむね3世帯に1世帯が、住宅改善の希望を持っていることになっています。


その内容は、世帯のタイプによって異なっていて、例えば子供のいる標準世帯においては、持ち家を新築・購入しようという世帯が多く、高齢者を含む3世代世帯は、自ら住んでいる家の増改築や、建替えが多くなっています。

また、若年・中年の単身世帯は、借家への入居を希望していることなどもわかりました。


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