■ インテリア計画
− 5 − 個室
一般の住宅に個室が設けられるようになったのは、1950年代くらいでしょうか。
それまでの日本の家屋は個室という概念に乏しく、家全体が家長を中心とした公的要素で成り立っていました。
個室が生まれたのは、戦後の平等の思想によって、個人を尊重する新しい家族像が形成されたことと、住宅が近代化されて食寝分離・個別就寝が実現できるようになり、公室と私室が分離したためです。
まず寝室が公室から分離され、さらに個人ごとの専用の空間が確立するようになりました。
家族とはいえども各個人は、異なった生活目的を持っていて、生活パターンにも違いがあります。
そのため、快適で合理的な生活を営むには、個人ごとにプライバシーの保たれた空間が必要となってきました。
現在では、わが国の子供部屋の普及率は、諸外国に比べて高いとさえ言われています。
子供室は、子供の成長の過程に合わせて適切な個室を与えることが自我の形成に役立つという意見もありますが、逆に子供室の密室化による親子間のコミュニケーション不足などの問題点も指摘されています。
また最近では、個室のあり方を夫婦や家族よりも、むしろ社会との関わり合いを重視して扱うなどの考え方も出されていて、多様なライフスタイルの中で、個室の持つ意味が問われてもいます。
個室の種類としては、通常、夫婦の個室、子供室、老人室などが挙げられます。
夫婦の寝室は、主寝室(マスターベッドルーム)とも呼ばれ、高いプライバシーが要求されます。
ここでは就寝、更衣、化粧などが行われますが、書斎を兼ねたり、休息・娯楽のスペースや、専用のバスルームを設けることもあったりします。
主寝室の充実を図る傾向が次第に強なってきている一方で、夫婦が仕事や趣味などの違いから、別々に個室を設けることも別段珍しくはなくなっています。
子供室は、子供の成長過程に伴い、要求の機能やプライバシィーに程度の差があります。
幼年期であれば、性別に関係なく2人室でもいいですが、中学生以上では、性別で分離したり、個別化する方法が採られます。
子供室の主な生活行為は、就寝、学習、更衣、趣味等ですが、学習によっては就寝と分離して共用の学習スペースを設ける方法もあります。
子供室はその成長過程によって要求の機能が変わっていくものですので、ある程度将来を予想して変更が可能なように計画を立てておくことが大切となりますね。
老人室は、高齢化に伴う心身の機能低下の程度によって要求条件も違ってきます。
基本的には、ほかの家族と生活のリズムやサイクルが違っても支障がないように、就寝だけではなく、接客もできるスペースを設けておくほかに、洗面所、便所を独立させて、さらにミニキッチンを設けて、独立した生活圏として計画する必要もあります。
その際老人の行動性や、車椅子の使用などを配慮した設備計画も行っておくことも大切となります。
ただし、プライバシィーについては、あまり孤立させるのではなく、家族との接触が常に保てるように配慮しておくことが望ましいですね。
高齢化視野界に向かいつつある今日、老人室の重要性はますます高まっていくので、その内容については十分な検討が望まれます。
それぞれの個室に必要な広さを算出するためには、まず就寝の仕方が基本となるため、布団かベットかの起居様式を決めます。
老人室の場合は布団の上げ下げの手間や介護などのことを考えると、ベッドの方が適切と言えます。
和室の場合は布団の寸法に、また様式の場合にはベットの寸法に、周辺の必要寸法を加えて必要な広さとします。
ただしこれは、寝るためだけのスペースですから、そのほかに化粧、更衣、学習、団らん、あるいは趣味などの行為に必要な空間と、ゆとりを加えて、最終的に個室の広さが決まってきます。
また、個室で大切なのは収納のスペースを確保することです。
衣類や所有物を整理・保管するために必要なスペースの充足度と、収納設備の使いやすさが、個室の機能を左右する決め手となります。
さらに、個室は最もプライベートな空間ですから、内装計画にあたっては、プライバシィーの確保はもちろんのこと、やすらぎや、個性の表出が行えるなどの手だても考えておく必要がありますね。
また、環境条件、設備についても、睡眠、休息、学習などの行為が快適に行えるように、次の点に注意したいものです。
(1) 採光と照明
昼間に使用することが多いので、老人室や子供室では直射日光を採り入れることが望ましいですね。
また、個室では安眠のために採光窓にはドレープなどによる遮光が必要にもなります。
(2) 照明計画
全体照明は、普通は10〜30lxくらいあれば良いですが、子供室や老人室では75〜150lxの照明がほしいですね。
また、学習や読書のために局部照明を使うときは500〜1.000lxの照明が必要となります。
(3) 音環境
安眠のために騒音に対する防御は特に必要となってきます。
外部や隣室からの騒音は35〜40デシベル以下であることが望ましいので、床、壁、天井、開口部等には、十分な遮音性能をもたせる必要があります。
− 6 − サニタリー空間
入浴、排泄の行為は生理的な面のみならず、最近では一般住居でも精神的な娯楽の要求も重視されるようになりました。
また、生活様式の洋風化、設備機器の進歩、さらに都市機能の充実によって、サニタリー空間は一頃に比べて明るく清潔で快適な空間に変わりつつあり、住宅の質の向上に貢献しています。
サニタリー空間に要求される事項としては、
(1)耐水・耐湿などがあり、汚れにくく、清潔な材料や設備で構成されて、掃除のし易いことです。
(2)老人や子供にとっても安全で、使い勝手がよいことと、
(3)設備機器は傷みやすいことと、技術革新も早いので、交換しやすいものにしておくことです。
(4)狭い上に機能優先になりがちなところなので、ゆとりや楽しさの演出ができること、などが挙げられます。
工法的にも、配管、配線などの設備や防水工事などに手間がかかりやすい場所でもありますから、最近はあらかじめ工場で製作され現場で組み立てるユニット化したものが普及し、工期の短縮や性能の向上、あるいは部材の取り替え、互換性などもよくなってきています。
近年は、来客用も含めて公室付近に便所と化粧室を設けたものが多いですね。
浴室、洗面所、便所の3つの機能の結合と分離の方法にはいくつかありますが、住宅の規模、家族数、生活スタイルに応じて選択すればいいでしょう。
住宅におけるサニタリー空間の位置は、配管や維持管理上、あまり分散させずに、2カ所程度にまとめたほうが合理的といえます。
(1) 浴室
洋風の浴室は、浴槽内で身体を洗うためにの洗い場が不要で、便器や洗面器を浴室内に一緒に置くことができ、サニタリーの面積は少なくて住みます。
しかし日本人にとって入浴は、単に清潔さや疲労を取り除くだけのためではなく、心理的開放感や、家族とのコミュニケーションの場としての役割も持っています。
したがって、浴槽も複数の人数が入れたり洗い場を設けるなどして、面積的にも広めとなって、浴室だけを独立したものとして計画されることが多いです。
浴室は和室、和洋折衷式、様式があって、それぞれ形状と寸法が異なります。
浴槽の設置方法には、埋め込み式と半埋め込み式及び据え置き式があります。据え置き式で和式の場合は、またぎにくい上、浴室を狭く感じさせます。
埋め込み式は、床下の部分に掘り込みのスペースが必要であるにのみならず、時として老人や幼児が転落する恐れもあります。
そのため住宅では、半埋め込み式の方が使い安いので、広く普及しています。
建具は、内開きにするのが一般的ですが、内部の人の動きや水栓、タオルかけ、照明などの位置との関係を考えて、交差しないように注意しなければなりません。
なお、老人や子供に使いやすくするためには、水仕舞の構造を工夫して、出入り口の段差をなくするとか、扉を木戸にするなどの方法もあります。
窓に対しては、採光よりむしろ換気や視覚的なゆとりの効果を考えて計画したいものです。
(1) 浴室
浴室の換気と照明には、次ぎの点に注意して下さい。
1、換気は内釜(BF釜を除く)を使用するときは、建築基準法に要求されている燃料カロリーに見合った換気量が得られるようにしなければならない。
また、湿気の停滞によるカビの発生を防ぐために強制換気を行った方が良いですね。
同時給排気式換気扇を使用すると、室内の温度の低下を防ぐことができます。
2、照明器具は防湿型として、演色性のよい光源を用い、照度は100lx前後とします。
器具の取り付け位置は、手暗がりにならないように、また人影が窓の外に写らないよう光源の位置にも注意が必要です。
(2) 洗面所
洗面所は洗面、化粧、更衣などのほか、浴室の前室を兼ねる場合には、脱衣や選択の場として使われたり、最近ではアスレチックなどの機能が加えられたりもしています。
このため、広さはそれぞれの行為に必要なスペースを検討して決めなくてはなりません。
また、使用者が複数になる場合もあって、動作も大きくなることから、ゆとりをもった広さとしておくことが望ましいですね。
さらにいろいろな用具が持ち込まれるため、収納についても細かく検討する必要があります。
洗面室では湿気がこもりがちとなるため、内装、設備には次ぎのような点に配慮しします。
(1)湯水や化粧品を使うため、床や壁は耐水性があり、耐薬品性をもちことが要求されます。
また、カビや汚れが付きやすいので、掃除のし易い仕上げとします。
(2)湿気や臭気を取り除くための換気が必要です。また明るく清潔な感じを与えるために、できれば自然光を採り入れることが望ましいですね。
照明の光源には、演色性のようものを用いて300lx以上の照度とします。
また、鏡に向かったとき、顔面に影をつくらないように照明器具の配置を考慮します。
全身を映し出す際の鏡の位置や大きさにも注意して、使うとき不便がないようにします。
(3)ヘアードライヤーなどを使う際のコンセントの位置や、タオル、化粧品、洗面用具、ティッシュペーパー等の細かいものの整理、収納方法なども検討しておくことが必要です。
3、便所
かつては和風もしくは和洋折衷が多かったですが、最近では様式スタイルに変わりました。
便所の広さは衣服の着脱、排泄などが支障なくできることが基本になりますが、病人や老人の介助のスペースも見込んでおく必要もありますね。
最近は、手洗いの機能を別に設置することが多くなっています。
扉は空間が手狭なときは、外開きを原則としておくことです。それは内部での動作のしやすさや、事故が起こったとき、外部からドアを開けられやすくするための配慮となります。
内装材は洗面所同様に、汚れにくく、掃除のし易い材料とします。トイレットペーパー、掃除用具入れ等の収納場所を用意しておくととても便利ですね。
設備面については、次ぎの点に注意して下さい。
(1)換気は臭気、湿気の排除が主なモノですが、窓のとれない集合住宅では、吸気をあわせて考慮する必要があります。
(2)夜間の使用では、他の居室との温度差が大きくなるところでもあり、暖房用、暖房便座用、清掃用などのためにコンセントを配置しておきたいものです。
(3)高齢者が使用する場合には、事故などにそなえて、センサー警報器などの設置も望まれます。
− 7− 通行の為の空間
通行の為の空間とは、玄関、廊下、出入り口、階段、スロープなどのことです。
これらは、住宅の各室や内外を結ぶ接点となる空間で、人の水平、垂直移動が行われ、活動量も多いところとなります。
このため、すべり、つまずき、踏み外し、ぶつかりなどによる事故が起こりやすく、安全面や歩きやすさなどの検討が望まれるところでもあります。
また、老人や障害者にとっては行動しにくい空間となりなねず、これからの高齢化社会のなかできめ細かい計画が求められるところとなります。
また最近では、この空間は単に通行だけの機能にとらわれず、ゆとりをもたせて楽しく演出された、吹き抜けやギャラリー、収納空間などに活用した計画も多くなってきています。
(1) 玄関
下履きを脱いで生活が行われる日本の住空間では、玄関の役割は西欧とは意味合いが大きく異なります。
玄関は外部(社会)と内部(家庭)との接点部分であり、ここで土間と床とに分かれるところです。
外部に対しては住宅の顔の役割を果たし、内部に対してはプライバシィーの防御機能が求められます。
ここで行われる主な行為は、車椅子などを含めた人や物の出入り、履き物やコートの着脱、挨拶など外来者との対応になります。
玄関に求められる条件は、こうした行為を行うのに必要な広さ、高い防犯性能、適度な明るさと換気、十分な収納、それに空間の演出性などになります。
特に設備面では、玄関が居室でないこともあって、明るさや換気が不十分になりがちになります。
照明や採光は、足元や人との対応に際して対面する者の顔が暗くならないように配慮します。
また、履き物などの臭いがこもったり、台所からの臭気が流れ込みやすい箇所でもあるため、換気にも十分な配慮が必要となります。
(2) 廊下・出入り口
1人の人が通行するのに必要な廊下の幅は75センチあればいいわけです。
ですが、これでは2人の人がすれ違うこともできず、また外開きの扉のあるところでは危険も大きなものとなります。
だから、車椅子での通行などとても無理なことでした。
戦後のモダンリビングの考え方では、廊下は不要で、設けるとしても必要最小限に抑えられる傾向にありました。
しかし、廊下によって空間に広がりや連続性をもたせたり、開放的なインテリアにすることもできるし、また熱や音に対する暖衝空間として利用することもできます。
高齢者用の手すりを設けることや、車椅子の利用を想定して、ゆとりをもたせた寸法にしておくことも必要となります。
また廊下は、履き物との関連で滑りにくい材料や歩きやすい材料を選び、発音性にも配慮したいものです。
出入り口の幅も、1人が通るには60センチですみますが、手荷物やワゴンの通過はもちろん、車椅子の通過についてもあらかじめチェックして必要寸法を確保します。
このほか、扉のうち開きか外開きかの開閉方向、左右開き勝手なども、部屋の機能や使用状況を想定し、1つ1つきめ細やかな検討が必要となってきます。
また、扉の施錠方式、スイッチやコンセントの位置、戸当たりなどについても、あらかじめチェックしておきます。
(3) 階段
まず安全であることが階段の計画上最も大切なことになります。
これは形状と勾配とによって左右されます。
形式は直通型、L型、U型、曲線型の4つに分類することができますが、直通階段はコンパクトに納めることはできるものの、急勾配になるので危険が大きいですね。
途中で踊り場を持つタイプは、転落した際ににも落差が小さく危険性も少ないです。
また、高齢者にも不安感や疲れを与えず安心です。
勾配は踏み面と蹴り上げの比になりますが、一般住宅では30°〜35°程度が適当なものになります。
一般住宅の室内階段の有効幅は、法規に75センチ以上と決められていますが、壁面に手すりを付けた場合、その寸法だけが余分に必要となるため、有効幅を抑えてから、手すりや柱、壁の位置を決めたいものです。
また天井高も頭を打つことがないように、210センチ以上とれるようにチェックが必要です。
踏み面の仕上げは滑らないように段鼻部分には滑り止めなどを設けて、転落を防ぐような処置が必要になります。
採光、照明なども、足元まわりを明るくするように設計したいものです。
− 8 − 収納空間
季節感が重視され、また和洋折衷の二重の生活様式がとられているわが国の住宅事情では、どうしても生活用具が多くなります。
しかも、贈答の習慣や家庭用電化製品の多くの普及もあって、生活にそれほど必要のないものまで持ち込まれる傾向にあります。
そうしたこともあって、物の整理や収納場所の計画が必要不可欠になります。
家族構成やライフスタイルの違い、あるいはライフステージなどによって、物の種類や量、収納の仕方などに違いが出てきます。
それぞれの家庭にあった、しかも将来を見越した収納計画が必要となります。
日常使用されるものは、使用する場所近くに収納されることが望ましく、衣類と寝室、食品と台所、本と書斎といったように分散して管理、収納することが望ましいですね。
また、季節、行事などに応じて、用いられる使用頻度の低いものは納戸、倉庫などに集中して保管するなど、分散と集中の仕方を考える必要があります。
収納はその大きさと、形状、質量、強度、収納の仕方(たたむ、重ねる、吊す、丸める、立てるなど)を考えて、収納スペースの高さ、奥行き、扉の形状、棚の間隔、引き出しの形状、寸法を決めなくてはなりません。
収納家具は、間仕切り収納ユニット、壁面収納ユニット、あるいは造り付け家具のように、建物や部屋の大きさに合わせて設置される場合と、単体家具のように単独で置かれる場合とがあります。
単体家具をいくつか並べて置く場合は、凸凹がないように、あらかじめ組み合わせを考えたユニット形式のものなどを使って、できるだけ部屋をスッキリと整えることを心がけたいものです。
住宅面積の少ない場合には、階段下、廊下、あるいは便所などで、デッドスペースになりがちな空間をきめ細かくチェックして、立体的に利用すれば意外に多くの収納場所を確保できます。
その場合にも収納行為に必要な動作空間は確保しなければなりませんね。
− 9 − 執務空間
従来の住宅内における執務空間といえば、子供の学習の場か、書斎などが対象でした。
しかし、情報の高度ネットワーク化によってホームオフィス(在宅勤務)も可能になり、住宅に新たな要求機能が加わることも考えられるようになりました。
在宅勤務は、通勤から解放されるばかりではなく、高齢者や女性、それに身体不自由者も自宅で就業てせきるという点で、これからの住宅を考える上で重要な条件の1つとなるでしょう。
執務空間は動きやすさが基本となりますが、住宅とはいえ、コンピューター、コピー機、FAXなどの各種情情報・通信設備機器の設置もあり、熱や音、光などは普通の住宅の室内環境条件とは異なった観点での配慮が必要となってきます。
動きやすさ(ワーカビリティ)で大切なのは、まず、椅子やデスクなどのワークデスク回りで、従来の読み書き中心の執務作業もさることながら、VDT(ビジュアルディスブレイターミナル)作業にも適するような執務空間をつく出すことでしょう。
それには長時間にわたる正しい作業姿勢と、動作が可能な機器類の配置と、人体への適合性を考慮して計画することでる。
また、収納も、フロッピーなど新しい情報媒体の管理保管を十分考慮すると同時に、従来の文章、ファイルなどの保管場所も確保しておくことが望ましいですね。
設備的には、次ぎのような点に留意します。
(1)天井照明や窓からの光がCRTディスプレイ(画面)に映り込み、グレアの生じることがないように、照明にはルーバーやカバーを取り付けたり、窓はブラインドなどで調節ができるように考慮する。
(2)通路や足元に配線がはわないように、ワイヤリングの適格な処理とともに、電気容量が十分であること。
(3)騒音や熱の発生に対して、吸音性能の高い材料を選んだり、排気、臭気についての対応をあらかじめ考慮しておきます。
(4)家具や設備機械は、オフィス空間を想定した材料や色彩、デザインのものが多いので、できるだけ樹歌の雰囲気にあったものを選ぶようにする。
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