■ 住宅政策と住宅産業
□ 住宅政策の新しい展開
− 1 − 今日の住宅問題
東京都心の商業地を源とする地価の高騰は瞬く間に周辺地域、さらに全国に波及して、特に昭和63年には東京圏で69%、3大都市圏で47%の地価上昇をもたらしました。
この影響で、特に東京、大阪などの大都市地域では、一般の勤労者が住宅を取得することが著しく困難となりました。
このような状況を経たわが国の住宅問題の特徴について、巽和夫京都大学名誉教授の論文の要点をまとめると次のようになります。
1、持ち家と借家の住宅規模格差と地域格差が著しく大きい。
持ち家と借家に分けてみると、持ち家は米国に次いで大きいが、借家は極めて小さい。つまり欧米では持ち家と借家の差が小さいのに対して、日本は両者の格差が2.6倍にも達している。
住宅困窮層は大都市の中・低所得者の借家居住者であり、そこにこそ政策の焦点を当てる必要がある。
2、戦後の住宅政策は公営、公団、公庫の3本柱であったが、実態的には住宅の供給を民間自力建設に大きく依存してきた。
民間自力建設のかなりの部分は、都市盤整備の不十分なままに建設された、狭小、低質、高密の不良住宅である。
こうした粗悪な住宅地域が大都市地域を中心に、なお数百万戸も存在している。住宅の社会的に質的規範をもたないままの「年収5倍持ち家取得論」は、規模の縮小、性能の低下など、住宅の質の切り下げに追い込む危険性が大きい。
3、住環境・設備等の送れが著しい。これまで住居水準の向上への努力はもっぱら1戸当り床面積の拡大に向けられてきた。
その結果、1戸当りの床面積については、ヨーロッパ諸国と同等程度にまで向上してきた。しかし市街地において、1戸当りの敷地面積、前面道路幅、日照時間、緑被率、下水道整備率などについては、なお著しく劣っている。
これまでの住宅の供給・建設に追われて、環境の形成や都市計画との結びつきをゆるせにしてきた。
※さて、あなたはこの見解、どう判断し、自分はどう感じていますか?
常に問題意識を持ち、そして「自分の意見」を持つことは、とても大切なことです。
「読んでいるだけ」、「見てるだけ」でなく、「感じられる」人になるよう心がけて下さいね。
− 2 − 新しい住宅政策
前述で述べたように、今日解決すべき住宅問題の中心は、大都市地域に居住し住宅に困窮している中・低所得者への住宅供給です。
これに対する施政の方向を第6期住宅5ヵ年計画では次のように述べています。
1、需要に十分対応した住宅の供給を計画的に行うため、大都市地域における各圏域ごとに広域的な取り組みを行い、既成市街地における低層住宅地域、低・未利用地、市街化区域内農地等において、地域の特性に応じ、土地の有効・高度利用等により良質な住宅・宅地の供給を促進するとともに、新市街地の計画的な開発、宅地開発を行う地域の拡大を促進する。
2、土地の有効・高度利用に当っては、都市計画制度および建築規制制度との連携を図り、中高層共同住宅の建設を誘導する。また、木造賃貸住宅が密集している地区等においては、建替えの促進等により、住環境の改善および良質な住宅の供給を図る。
また、わが国においては、経済的活力のある間に、良質な住宅ストックを形成しておかなければならないことから、特に、ストック面での不足が目立つ、世帯人数3〜5人の標準的世帯向けの、賃貸住宅ストックの形成を図る必要があります。
そのため、公共住宅および民間住宅について、次のような施策を講ずる、としています。
◇公共住宅
ア、自力では最低居住水準を確保することが困難な階層に対する住宅の供給、街づくりと住宅建設との一体的な促進等、民間では対応が困難な分野、および世帯人数3人〜5人の標準的な世帯向けの賃貸住宅の供給等、民間市場で十分な供給がなされていない分野において、公的主体による住宅の供給を進める。
イ、既存公共賃貸住宅の建替えの促進、国公有地等の活用、民間住宅の借り上げ等により、公共賃貸住宅の供給を促進するとともに、その規模の拡大を図る。
ウ、公共賃貸住宅を施政対象層に的確に供給するため、適正な家賃の設定、および既存家賃の定期的な見直し、公共住宅相互間の住み替え措置の拡充等、管理の適正化を促進する。
◇民間住宅
ア、民間住宅の建設を促進し、良質な住宅ストックの形成を図るため、住宅金融について安定的な資金の確保に努めるとともに、資金上の援助および税制上の措置を行う。
イ、土地所有者等による、世帯人数3〜5人の標準的な世帯向け民間賃貸住宅の供給を促進するため、資金上の援助を行う。特に市街化区域農地における農地所有者等による、賃貸住宅の建設を促進する。
ウ、既存住宅ストックの質の向上を図るため、増改築等リフォームを促進するほか、中高層分譲共同住宅の維持・管理の適正化に努める。
また、民間賃貸住宅における賃貸借関係および経営の合理化を図る。
さらに、良好な住宅環境の形成について、次のように述べています。
-1、既成市街地については、低水準の住環境の地区において、その実情に応じた面的整備事業の計画的な促進により、良好な住環境の形成を図る。
また、中間的な水準の地区における住環境の向上、及び良好な住環境の地区における住環境の維持保全のため、住民の自主的な取り組みを支援、誘導する。
-2、新市街地については、良好な住環境を整えた市街地形成を支援、誘導する。この場合、必要に応じて地域ごとに住環境の整備に関する方針の策定を促進し、計画的、総合的な整備に努める。
なお、わが国は世界に類を見ない速さで、やがて高齢化社会を迎えますが、これに対する住宅整備の対応は次の通りです。
-1、親族との同居、近居等高齢者の多用な住み方に応じた住宅供給を促進する。
また、公共賃貸住宅の的確な供給等により、高齢者の居住の安定の確保を図る。
-2、設計、設備等の面で高齢者に配慮した住宅の供給を促進する。
-3、医療、福祉施策との連携を図りつつ、高齢者向けの住宅対策を実施する。
-4、障害者等についても、高齢者と同様に居住環境、住宅の設計、設備等に関してその世帯の特性に応じた適切な配慮を行う。
これまで述べてきた施策のほかに、「地域の政策課題への対応」と、「住宅生産供給の合理化」等にも触れています。
-1、多極分散型国土の形成に資するため、先端産業等の立地、リゾート開発等の地域開発にともなう住宅需要に応じ、計画的な住宅供給に努める。
また、魅力あるふるさとづくりのため、固有の伝統、文化等地域の特性を生かした住まい作りを促進する。
この場合、地域の政策課題にきめこまやかに対応するため、市町村における住宅計画の策定を促進するとともに、地域の特性を活かし、地域活性化に資する公共住宅等の供給に努める。
-2、住宅性能の向上と価格の安定に資するため、生産供給システムの合理化、消費者の多様なニーズに応える、優良な住宅および住宅部品の開発、普及、並びに住宅関連産業の振興を促進する。
また、魅力ある職場づくり等により、技術労働者を中心とした労働力の確保に努める。
また、良質な木造住宅の普及を促進するため、公的融資の活用を図るほか、木造住宅に関する技術開発を行う。
なお、平成4年6月に閣議決定された「生活大国5ヵ年計画」(平成4年〜8年度)においても、これからのわが国の重要課題の一つに、住生活の充実をあげられていて、具体的な目標として「大都市地域においても、勤労者世帯の平均年収の5倍程度を目安に良質な住宅の取得が可能となることを目指して、住宅対策等の緒施策の充実を図る」こととしています。
住宅事情の深刻な東京都においては、平成3年7月に2000年を目標年次とする「東京都住宅マスタープラン」を策定するとともに、国の施策との連携を図りつつ、一般勤労世帯向けの良質な賃貸住宅(都民住宅)の供給拡大に努めています。
|
|
|
|