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■ 西洋のインテリアの歴史



インテリアの歴史は、今日の建築様式や住居形態から考えると、ヨーロッパの流れを中心にとらえることが基本となります。

しかし、ヨーロッパが文化の先進地域とは呼べない時代もあって、中国、日本、インドなど東洋やその他の地域との関係を知ることも大切です。


また、古代からの歴史的な遺構の多くは、それぞれ時代の権力者のものであって、近世までの様式変遷の様相は、上流階級の考え方や好みに基づいています。

ごく一般的にヨーロッパの伝統様式というと、ゴシックあるいはバロックの頃から19世紀に至るまでのものを指しています。

これをクラシック様式と呼ぶことも少なくありませんが、歴史上でクラシックというと、本来は古代ギリシャやローマの古典様式を意味している点に注意して下さい。


内装が建築そのものと分かれ、独立して製作、施行あるいは改装されるようになったのは、バロックの時代あたりからで、それによってインテリアデコレーターやデザイナーの職業的な自立の道が開かれました。

インテリアの様式の歴史を理解するためには、それぞれの時代の社会的背景や生活様式をもとに、建築、家具、装飾工芸などの造形特性を把握する必要があります。

ここでは、それらのもっとも重要事項と思われるものについて記述していきたいと思います。




− 1 − 古代



(1) 先史時代

現在の人類の祖と考えられる現生人類は、約4〜5万年前に現れたとされています。

旧石器時代とされているそのころのヨーロッパにはクロマニヨン人が住んでいましたが、その遺跡としてスペインのアルタミラやフランスのラスコーなどの洞窟があります。

それらの洞窟内に残されている壁画は、絵画表現の最も古いものとして知られていますが、その中には住居を描いたものもあり、洞窟に住むばかりでなく、すでに小屋のようなものもつくっていたと考えられます。


氷河期が去って新石器時代になると、生活を維持するためのさまざまな技術も進み、各地に竪穴住居、水上住居のほか石造りによるものなどもできるようになりました。

歴史的区分の上で古代とされる以前の、今から約1万年前から5〜6000年前までの住居の発達を見ると、先行するのは西ヨーロッパではなく主に東方の地域で、例えばトルコのアナトリア高原チャタル・ヒュックでは、紀元前6000年頃のものと考えられる都市型の住居群の遺跡が発掘されています。

これは日干し煉瓦を用いて、隣家と密着して建てられ、平らな屋根に閉口部があり、出入りもそこからはしごを使って行われていたといいますが、内部の居住性への配慮が伺える水準の高い住居でした。



(2)エジプト

ヨーロッパがまだ新石器時代であった紀元前4000年頃、エジプトでは青銅器を使うようになり、文明は飛躍的進展の段階を迎えました。

ナイル川の利用によって農耕が発達しましたが、治水事業の推進はさまざまな事業とともに共同意識を高めることになりました。

紀元前3000年頃には統一国家の形成を果たし、紀元前525年に至る約2500年の間、大朝時代が続きました。

国王(ファラオ)が政治、宗教を統率しましたが、王の墳墓であるピラミッドをはじめ、神殿など巨石を用いた大きな建造物をつくりました。

その造形は重厚、直裁でした。ピラミッドではギザのクフ王などのものが、その規模においても有名です。神殿ではカルナクのアモン神殿や、岩に彫り込んだアブシンベル神殿がよくしられています。


神殿などの建築は、石の板で陸屋根を造る楯(まぐさ)式の構造の為、柱を多く立てる必要があり、装飾的にも柱に特徴があらわれています。
パピルス、しゅろ、ロータスなどが代表的な装飾モチーフでした。

上流階級の住宅は、主に日干しレンガによって建てられ、中央のホール、主人や家族の寝室、浴室のほか、パンを焼く部屋や使用人の部屋などいくつもの区画を持った大規模なもので、いす式の生活が行われていました。

これに対して庶民の住宅は、ヤシの木の骨組みに土を塗ってつくられ、床に座る生活であったと言われています。

家具は墳墓に残されたものを、今日でも見ることができますが、肘掛け椅子、折り畳み椅子、スツール、ベットなど高度な技術によってつくられていて、ほぞによる接合方法なども用いられています。

特に王のための家具には、象嵌や彫刻など豪華な装飾が加えられていて、中でもツタンカーメン王の墓から発掘された王座は全体に金箔が施され、ライオンの脚の彫刻をした脚部など、その装飾の豪華なことで知られています。

織物も亜麻の繊維を使って、精巧に織られた布があり、つづれ織りの技法も行われていました。



(3)メソポタミア

チグリス、ユーフラテス両河の流域には、紀元前3000年頃からメソポタミア文化が栄えました。

この地方には建築に利用できる木材や石材がなかったため、粘土による日干しレンガを主な建築材料としましたが、次第に焼成レンガや彩ゆう浮彫レンガなども使うようになりました。

また、レンガによるアーチ構造も発達しました。

代表的な建築遺跡としてはアッシリアのサルゴン王がコルサバードに建てた宮殿などがあります。

また、アッシリアやバビロンの影響を受けたペルシャにおいては、ベルセポリスの宮殿が知られていますが、これは石材を用いてより精巧なつくりになっています。


メソポタミアの上流階級の邸宅は、長方形の平面で、外周の壁には窓がなく、中央の中庭は、戸外で営まれることが多かった生活の中心でもありました。

上流階級の人たちが用いた家具は、エジプトとほぼ同種のものでしたが、脚には旋盤加工によるひき物も用いられています。

紀元前7世紀頃のアッシリアの王の宴のレリーフには、ベッドに横になった王と、椅子に腰掛けた王妃が飲食しているところが描かれていますが、このようにベッドで飲食する習慣は、後にギリシャやローマの時代に受け継がれました。



(4)クレタ・ミケーネ

地中海の東、エーゲ海の南に位置するクレタ島には、紀元前3000年頃、青銅器文化として知られる高度な文明が栄えました。

代表的な遺跡にはクノックスの宮殿があります。

4階建ての部分もある複雑なプランで、数百の部屋があり、中央広場を囲んで政治、宗教などの公的な部分、王の私生活の部分、搾油や製陶をする工房部分と倉庫の4部分で構成されています。

室内や廊下の壁や天井には花鳥、魚や動物、婦人像などが生き生きと鮮やかな色彩で艶やかに描かれました。

これらの壁面には、フレスコの技法が用いられています。また、水道や下水も完備しています。

クレタは紀元前1400年頃にギリシャ人によって滅ぼされましたが、紀元前1600年頃からギリシャ本土の南部に起こった都市国家による文化を、その最大の都市ミケーネ文化と呼んでいます。

ミケーネ建築の特色はメガロンと呼ぶ住居形式で、玄関、前室、炉のある主室が前後に並び、三方が壁で囲まれて、一方だけに開口部があります。

宮殿はこのメガロン集合体で、メガロンに列柱を巡らせた構造は、ギリシャ神殿の基本形となりました。

またミケーネ装飾は、クレタに比べて写実性を離れて模様化し、構成的なものになりました。



(5)ギリシャ

ギリシャ本土を中心に、定住を始めたドリス人(ドーリア人)が、ヨーロッパ文化の源流ともなったギリシャ文化を築いたのは紀元前7世紀頃からでした。

ギリシャの造形は、均整と調和をもつ、理想的な美をそなえたものでした。

代表的な建築としてはアクアポリスの神殿群が挙げられますが、その中心となっているのがパルテノン神殿です。

ギリシャの神殿は初期には木の柱が使われましたが、後期のものは、大理石による石造り建築です。

その各部分の寸法や比例には規定がつくられていました。

神殿を特徴づけている円柱の構成体系は、エンタブラチェア、柱身、基壇の3つの部分からなり、オーダーと呼ばれています。

オーダーは一般にドリス式、イオニア式、コリント式に分類されますが、ドリス式は最も基本的なもので、柱が太くエンタシス(ふくらみ)をもち、素朴な形態です。

イオニア式は柱身が細長く、うずまき型の柱頭の特徴があります。コリント式では柱身がさらに細長くなり、柱頭にはアカンサスの葉の飾りが用いられました。


ギリシャ時代の住宅も、中庭を囲んで部屋が配置されていましたが、比較的簡素なものでした。壁体はレンガで造られていて、表面は漆喰で仕上げられていました。

簡素な生活を心がけたギリシャ人が使っていた家具は機能的で、椅子、スツール、ベット、櫃など必要なものだけを整然と配置していました。

ギリシャの家具の中では、裕福な階層の人々が日常使用したクリスモスという背や脚部に反りのある椅子がよく知られています。

また、直線的な構成のディフロスという椅子などもあります。食事にも使われた判臥式の寝椅子はクリーネと呼ばれますが、後生のカウチやソファの原型と考えられます。




(6)ローマ

ローマは、エトルリア人が支配していた時代の後、紀元前6世紀以降共和制時代となり、紀元前27年に帝政の時代に入りました。

ローマ人の築いた文化は、ギリシャ人の理想主義とは異なり、きわめて現実的で、生活は享楽的な性格を強めていきました。

ローマの建築は、大理石やレンガの活用と同時に、火山灰、石灰、砂利を混ぜたコンクリートを用いました。

それによって柱間の広い大建築が可能となり、エトルリアから受け継いだアーチの技術を発展させた交差アーチや半球ドームを生みました。

その最も代表的なものがパンテオンで、直径・高さともに43.5mです。そのほか円形劇場(コロセウム)、カラカラ浴場などが大建造物として有名です。

ローマ人の住宅の実際は、火山の噴火で埋没したまま保存されたポンペイの遺跡が、そのありさまをよく伝えています。

上流階級の住宅は入り口を入ると大きな天窓をあけた広間(アトリウム)があり、奥に列柱のある中庭(ペリスチリウム)を囲んで家族の部屋、さらにその奥に果樹園や畑を配していました。床には大理石のモザイクが張られ、漆喰塗りの壁面にはフレスコの壁画が描かれました。

これに対して庶民の住宅は粗末で、都市では密集した5〜6階建ての集合住宅に住む人たちが多かったようです。


当時の家具は、木材のほか、大理石やブロンズ製のものも多く、彫刻や象嵌による装飾性の高いものが好まれました。

この時代の上流の人たちはトリクリウムと呼んだ部屋に設けられた寝椅子に横になって会食する習慣がありました。

また、高価な食器などを収納する食器戸棚なども使われ始めました。王座などの公的な場で使われた椅子にはソリウム、ビセリウムなどがあります。


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